人生はどうせ一度だけの旅。ともすれば人は自分の力で生きていると錯覚しがちだが、そんな力は人間にはない。誕生それ自体が自分の意志や力とは無縁。生きているさなかは確かに見えるその意志や力とは無縁。その意志や力も、死の前では生まれた時と同様にまったく無力。要するに人間は、最初から最後まで自分のことを何も決めることができない。人は生きているのではなく、ただ、生きさせられているのだ。したがって、人間の生命、生きるという営みは本来、無条件、無目的であるはずだ。政治や経済だけが価値であり、社会の現実だと思って生きているようでは空しいだけだ。ここで問題にしたいのは熱いものを自分の中に持って、自分をひらいて生きているかどうかだ。強烈に生きることは常に死を前提にしている。・・・・死という最も厳しい運命と直面して、初めていのちが奮い立つのだ。・・・・芸術もそうでなければ芸術とは言えない。誰もいつかは消える。それでよいのだ。だからせめて生かさせられているあいだは、無条件にふくらみ、輝いて、最後に爆発する。それこそが栄光なのだ。